ホーチミンを出発したバスは
一路カンボジアとの国境を目指して走る
ベトナムのパスポートコントールに
辿り着くと
次なる未知の国への期待で胸はいっぱいだった
でも
無かったのだ
ベトナムに入国するときに
渡されて
出国するまで
持っていなければならなかった青い紙が

右のポケットにも
左のポケットにも
それは見あたらない
なくした旨を告げると
役人は
僕にそのまま待てと言う

同じバスの乗客は
ひとり
またひとりと
カンボジアへ入っていく中
僕は２０分も３０分も待っても
放置されたまま
意を決して
こっそり役人に
１０ドル紙幣を渡してみると
まあ不思議
あれだけ待たされたのに
あっという間に
出国手続きをしてくれた

なんだよ
やはり金が目当てだったのか