Vol.216
ルーマニア
 / ブカレスト

街角
ブカレストもまた
偽警官の宝庫だった

歩いていると
自称旅行者が声をかけてきて
たわいもない話をしているうちに
判を押したように
次は警官と称する男が登場する
第二幕のはじまり

身分証明書らしい物を見せながら
僕を威嚇する
違法な両替をした疑いがあるので
財布とパスポートを見せなさい
自称旅行者の男も
この人は警官だから大丈夫
なんて言うのが空々しい

僕は笑ってしまった
だっておかしい
どう考えたっておかしい
僕と同じく容疑をかけられているはずの
自称旅行者までもが
僕に見せろ見せろと
迫ってくるのだ

しかし
後から考えると
ここで笑ってしまったのがいけなかった
警察署に行ったらパスポートを見せる
と応じたとたん
男は車を用意してきて言う
これで行くぞ
地獄の第三幕のはじまり

いくらなんでも
強盗の車に乗るのはいけない
乗ったら最後
二度と太陽を拝めないかもしれない
いつの間にか自称警官と自称旅行者が一緒になって
嫌がる僕を
強引に車に乗せようとする
初めて声をあげた

ヘルプ・ミー!

ルーマニア語でなんて言うのか
英語が通じるのかどうなのか
なんて
考えている余裕はなかった
相手が怯んだ隙に
僕は走り出す


だいぶ走った後
息を整えながら歩いていると
ひとりの男が寄ってきて言う
私は警官だ
パスポートと財布を見せなさい

つづく
ここまでの行程:
東京→下関→釜山→ソウル→広州→南寧→ハノイ→フエ→ホイアン→ニャチャン→ホーチミン→プノンペン→シェムリアップ→バンコク→ビエンチャン→ノーンカイ→バンコク→北京→西安→敦煌→トルファン→イーニン→アルマティ→タシケント→サマルカンド→ブハラ→ヒヴァ→アシュガバード→マシュハド→テヘラン→イスファハン→ヤズド→ケルマン→バム→バンダル・アッバス→ホルムズ島→シラーズ→アフワズ→ケルマンシャー→ハマダン→テヘラン→ラシュト→マースーレ→タブリーズ→キャンドヴァン→マクー→ドゥバヤズット→ワン→カルス→エルズルム→トラブゾン→デヴリィ→エラズー→ハルプット→ディヤバクル→ マルディン→シャンルウルファ→ハラン→ギョレメ→イスタンブール→エフェス→シリンジェ→クサントス→アンタクヤ→アレッポ→ハマ→アパメア→クラック・デ・シュバリエ→ダマスカス→ベイルート→サイダ→スール→ビブロス→トリポリ→アンジャル→バールベック→ダマスカス→パルミラ→クネイトラ→ボスラ→ジェラシュ→アンマン→ケラク→ペトラ→アカバ→ダハブ→シナイ山→スエズ→ポートサイド→アレキサンドリア→アテネ→デルフィ→オリンピア→スパルタ→ミストラ→ナフプリオン→ミケーネ→エピダウロス→コリントス→ハニア→レシムノ→イラクリオン→アギオス・ニコラオス→ロードス・シティ→リンドス →サントリーニ→イオス→パロス→ミコノス→デロス→シロス→メテオラ→テッサロニキ→ソフィア→コプリフシティツァ→ヴェリコ・タルノヴォ→ブカレスト
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